用途に適したインクはどれでしょうか?

Kyle Pucci, 1月 23, 2018

デジタルインクジェット印刷を使ったプロセスを開発したいが、どのようなインクが適しているのかわからず、選択肢の多さに戸惑ったり、それぞれの違いがよくわからなかったりしませんか? この記事では、最も一般的なインクジェットアプリケーションで利用可能なインクの選択肢と、それぞれの長所・短所を説明することで、意思決定プロセスの基礎を伝授します。

ここでは、簡単に説明するために、何かの画像を印刷したい場合を想定して、少し限定して説明します。今後別の記事で、3Dプリンターや電子機器など、特殊な用途のインクについても説明していきます。

主流のインク分類法としては、主に粘度調整のための希釈材で分類され、次いで機能で分類されます。最も一般的な希釈材は、UV、水性、油性、溶剤です。これらの種類のインクはいずれも従来の印刷方法でも使用されてきたものであり、その使用理由の一部はインクジェットにも当てはまることが多いです。

これら4種類のインクのうちどれを使用するかを決定する主な要因は、常に印刷対象素材の表面に関連しています。表面の状態によって、濡れ具合、インクの内部への浸透度合い、化学的相互作用、インクの乾き方などが決まります。特定の用途にどのインクが最適かという最終的な判断は、他の多くの要因にも左右されますが、どのような表面に印刷するかを決定することは良い出発点であるを覚えておいてください。ここでは、印刷可能な表面を以下の5つの一般的なカテゴリーに分類しました。

多孔質表面

インクジェット印刷の研究は、印刷表面ではよく乾くが、プリントヘッドの中では乾かないという矛盾を達成するために日々進化しています。表面によっては、速乾性の高いインクを使わないと印刷できないものもあり、そのようなインクをプリントヘッド内で使用すると、メンテナンスが大変になります。一方、紙や段ボールのような多孔質の表面は、インクが容易に吸収されるため、この問題はありません。むしろ、断続的な使用が予想されるため、プリントヘッドの信頼性が最優先され、課題となっています。産業界以外のお客様は、プリンターを常時稼働させているわけではありませんし、何週間も放置された後でも、1枚目から良好な印刷ができることが求められます。このような理由から、メンテナンスが少なく、信頼性の高いインクが望まれています。

水性インクは、最も低コストで実現できる、多孔質表面への印刷向けの最も一般的な選択肢です。水性インクは保湿剤(親水性の材料)をふんだんに配合することができるので、待機時にノズルから水が簡単に失われることがなく、信頼性が高いです。染料を使ってインクを調合・製造し、PIJとTIJの両方のプリントヘッドに対応できるため、製造コストも低く抑えられます。

水性インクは信頼性が高いと言われていますが、さらに信頼性の高い選択肢があります。理想科学工業では長年にわたり、スモールオフィス向けに油性インクを使用したプリンターを製造してきましたが、これも乾燥のしやすさとヘッドの信頼性を両立させるためです。また、DODの段ボール用コーディングシステムにも油性インクが使われています。ほとんどの油性インクは揮発性が低いため、プリントヘッドの中でより安定していますが、高温でなければ除去できないということでもあります。


より信頼性が高いとはいえ、油性インクに含まれる残留物質の移行は望ましくない場合があります。例えば、2011年には、再生新聞に使用されたオフセットインキから発生した鉱物油が穀物から検出されました。この結果、デリケートな用途に再生パルプを使用することは禁止され、ダイレクト・トゥ・ボード・コーディングでは鉱物油を含まないインクが使用されるようになりました。水性インクは一般的に鉱物油ほどの毒性はありませんが、化学物質の移行を考慮する必要はあります。

インクの吸収が必ずしも味方になるとは限らないことは、覚えておくべき重要な点です。インクが印刷表面から内部に吸収されると、着色剤も内部に引き込まれてしまうため、発色性が低下します。また、異なるインク色を隣り合わせで印刷すると、相互に影響し合うことがあります。これをインクブリード(にじみ)といいます。水性インクでも油性インクでも、主な乾燥方法を印刷面の表面吸収に頼りすぎると、この問題が発生します。

結論:低コストで環境や人に優しいインクを求めるなら水性から。より高い信頼性を求めるなら、油性インクを。

非多孔質 および/または 高分子素材

This category is practically a catch-all for everything else that’s not paper, other than textiles or un-fired tile, which are both quite special cases. Fast drying is important to avoid bleed, so now head reliability must be balanced in order to formulate inks that will dry to the substrate. UV inks have dominated the industrial printing of non-porous media since they can be cured immediately, yet stable in the print head and can be formulated for a variety of requirements. By choosing the mixture of monomer and resins, the skilled formulator can produce the utmost flexibility (e.g. thermoforming, vehicle wraps) or solvent resistance (e.g. glass printing, ). Of the different applications, wide-format printing has seen the greatest growth in UV in the 21st century but over the last 10 years volume has grown steadily into labels and décor on the back of single-pass printer developments.

溶剤インクは、主に大判のグラフィックスやコーディングなどの非多孔質表面用途で主力となっています。溶剤インクは、より高いレベルの柔軟性と光沢を提供し、これは一部の大判グラフィックス用途には望ましいことです。また、パッド印刷などの伝統的な印刷方法では、溶剤による基材への適応性や印刷物の耐性は他の追随を許しません。インクジェットインクにこの耐性を持たせるのは少し難しいですが、それでもCIJとDODの両方において、耐久性のあるコーディングや表面へのマーキングには溶剤インクが最適です。

溶剤インクを使用する上での課題として、安全性と信頼性に関するものがあります。グラフィックス用途では、印刷品質を最適化するために、インク開発者は一般的に特殊な高分子材料に頼っていますが、特に職場の安全性を考慮して乾燥速度の遅いインクが採用されています。また、「強」溶剤インクは、レイテンシーの問題があることで知られています。

機能性成分を含む水性インクは、2008年からHPが開発・販売しており、その後も他の企業が追随しています(例:Sepiax)。その基本的な動機は環境対策で、いわゆる「ラテックス」インクはもともと溶剤インクに対抗するものでした。しかし、2012年にHPのスーパーワイドプリンター3000シリーズが発売されて以降、ラテックスはむしろUVと競合するようになりました。

このタイプのインクの原理は、印刷後に「ラテックス」ポリマーを熱で硬化させるというものです。この発明はHPにとって新しいものではありませんでしたが、以前の試みでは、HPに市場での成功のための情熱が不足していました。最初に公開されたバージョンは高温を必要としましたが(例:Lexmark, US6498202, 1999)、現在ではその温度は着実に下がっています。しかし、温度が低すぎると、ポリマーをプリントヘッド内で維持するのが難しくなるため、低すぎてもいけないのです。

溶剤インクと同様に、このプリントプロセスの目標は、プリントヘッドでの乾燥特性と非吸収性素材へのプリント品質のバランスをとることです。乾燥性の低下は必然的にカラーブリードにつながりますが、HPのウェブサイトに掲載されているテクニカルノートでは、インクのにじみやノズルの信頼性が低いため、サードパーティのラテックスインクを使用することの危険性を強調しています。


このような水性インクの最終的な課題は、エンドユーザーが溶剤やUVで得ているレベルと同じ耐性を得ることです。これが、熱硬化工程をUV硬化に置き換えたハイブリッド水性UVインクの開発理由の一つです。これにより、ヘッドの寿命への影響を抑えつつ、最終的な印刷性能を向上させることができる可能性を秘めています。

結論:オールラウンドなインクを求めるなら、UVインクを。耐久性を重視するなら溶剤系インクを。環境や人体への安全性を高めるには、ラテックス/水性インクを検討しましょう。

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テキスタイル

テキスタイルプリントは少し特殊なケースです。プリントされる素材は多孔質(織り目による)であると同時に非吸収性(繊維レベル)でもあるからです。
インクの種類は、生地の材質ごとに要求される条件が異なるため様々(下表参照)ですが、市場で主流の希釈剤は水性です。インクジェットによる生産量の大半は、DTG(ダイレクト・トゥ・ガーメント)や昇華プリント用の分散染料ですが、小型のワイドフォーマット機で最初に使用されたインクの中には、酸性染料や反応性染料もありました。テキスタイル用の顔料インクは、数量的にはまだこれからのアプリケーションですが、実績のあるデュポン社のArtistri®インクが主流となっています。


UVインクやラテックスインクは、テキスタイル素材への適用に成功していますが、その多くはソフトサインのアプリケーションです。印刷された布の肌触りは衣類にとって重要な品質の一種で、従来のUVインクは固形分が多いため衣類への適用が敬遠されていました。HPはラテックスが適していると宣伝しており、実際に固形分は20%以下とUVインクよりは少ないようです(US9187667より)。

結論:ほとんどのアプリケーションは水性インクが使われます。テキスタイルの肌触りを重視しない場合は、グラフィックス向けUVインクやラテックスインクを検討してみてください。

セラミックス、ガラス、木

インクジェットを装飾面に適用する場合、これまで見てきたものよりも少し複雑な工程をたどる場合が多いです。インクは通常、製造プロセスの一工程として塗布されます。セラミックタイルの印刷はその好例で、より詳しくは別の機会にご紹介します。インクは「グリーン」タイルと呼ばれるプレスされた粉体に直接印刷されます。タイルはインクジェット印刷前には釉薬でプレコートされ、印刷後にはエナメルで後処理されます。さらに焼成工程で無機顔料がガラスと反応して発色するのです。

同様のアプローチは建築資材としてのガラスへの印刷にも適用されています。上の写真は、Dip Tech社の技術を用いて建築物に高品質の印刷を実現したものです。プリンターの外観は標準的なグラフィックプリンターに似ていますがプロセスは非常に特殊で、完全に非吸収性のガラス上で十分な速乾性を確保するために多くの加熱をおこなう様子は、HP社の大型ラテックスプリンターに少しだけ似ているかもしれません。

その他の装飾分野では、ロール紙や複合ボードのシートを有機顔料で色付けし、メラミンで高圧ラミネートする工程があります。インクは通常水性ですが、特殊なUV製品も開発されています。

シンプルな表面印刷を希望する場合は、上記の吸収性メディアと非吸収性メディアの一般的なルールに従うことができます。未処理の木材はかなり吸収性がありますが、処理された木材やコーティングされた木材、MDFのような加工素材は吸収性が低くなります。また、石やコンクリートにもある程度の吸収性があります。このような場合には、最終製品の使用環境とと想定寿命をもとに、退色性を考慮してインクを選択する必要があります。この問題を解決するために、無機物のセラミックインクが使用されてきましたが、UVインクに有機顔料をオーバーコートすることで近い性能を発揮することも可能です。

結論:グラフィックス用UVインクや水性インクは、装飾用の表面印刷用途によく使用され、透明なニスインクをオーバープリントすることで耐久性を向上できる可能性があります。特定の用途では、最終的な性能を向上させるために、専用にカスタマイズされたインクを使う場合があります。

プリンテッドエレクトロニクスと3Dプリンティング

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最後に

さて、印刷する表面に応じてどのインクを選択すべきかという大まかな方向性が示されたところで、今度はインクを選択する際に考慮すべき他の項目について見ていきましょう。素材に印刷できるかどうかだけでなく、最終用途における印刷物の特性も重要な要素となります。柔軟性、各種耐性、インク成分の移行(例:食品への移行)など、すべてを考慮する必要があります。これは、お客様の特定のアプリケーションに固有のものであり、慎重に検討する必要があります。

多種多様なインクの化学的性質や使用方法を比較するには、表にするのが一番です。下の表は、「Handbook of Industrial Inkjet Printing: A Full System Approach」 (Werner Zapka著 (出版元:Wiley, 2017))のTable 3.1から引用しています。これは、議論をずっと先に進めてくれる非常に有用な本です。


より深い詳細についてはまたの機会に紹介しますが、ご意見やご質問がありましたら是非お聞かせください。また、今後のテーマについてのご提案もお待ちしております。

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